アオウミガメ

アオウミガメを守る

小笠原のアオウミガメ

小笠原諸島では、アオウミガメが食肉として利用されており、刺身や煮込みなどが郷土料理として親しまれています。アオウミガメの捕獲は、日本人の移民が始まった1800年代後半より本格的に行われており、現在も東京都漁業調整規則による認可のもと母島列島を中心に年間約100頭が捕獲されています。アオウミガメを増やそうとする取り組みも早くから行われていますが(1910年)、個体数を回復させるには至らず、一時はかなり減少しました。その後の保全活動により、現在は、30年前の約10倍にまで産卵巣数が回復しています。ウミガメ(資源)を継続的に捕獲(利用)しながら増加させている事例は、世界的に非常に稀であり、世界中の研究者からも注目されています。
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アオウミガメは世界の熱帯・亜熱帯域に広く分布し、日本近海においては、日本海側も含め室蘭以南から南西諸島まで広く分布しています。産卵は屋久島、奄美諸島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島でも確認されますが、その大部分が小笠原諸島に集中しており、一定規模を保つアオウミガメ産卵地としては、北太平洋域での北限となります。最近の遺伝学的研究では、小笠原のアオウミガメは、世界の他の繁殖域では見られない遺伝子型を含むユニークな系群であることが解っており、小笠原諸島は、遺伝学的にもアオウミガメの希少な産卵地となっています。

上陸産卵数のモニタリング調査

小笠原諸島には、大小あわせて約40ヶ所のアオウミガメ産卵海岸が確認されています。産卵シーズン中(5月~8月)は、これらの海岸を定期的にパトロールし、産卵上陸する親ガメの頭数や産卵巣数をカウントしています。産卵巣は、基本的に自然状態でふ化させられ、約2ヵ月後に行われるふ化率調査のため産卵位置が計測されます。産卵巣数を継続的にモニタリングすることは、小笠原周辺海域におけるアオウミガメの資源動向を把握する上で重要な調査となります。

産卵巣のふ化率調査

産卵約2ヵ月後、海岸パトロール時の記録をもとに産卵巣を掘り返し、ふ化率を調査しています。掘り出した卵殻の状態により各卵のふ化状況(正常にふ化した卵、スナガニやアリなどの食害にあった卵、発生途中で死亡した卵など)を判別し、ふ化率を算出します。ふ化率は、各産卵海岸により違いがあり、海岸の形状や砂質、砂の温度、食害生物の有無などの海岸特性に影響されています。算出したふ化率は、子ガメ生産量などの推定に用いられ、アオウミガメの持続的利用に向けた資源管理に役立てることができます。

標識放流調査

夜間、産卵のため上陸するメスの親ガメを捕獲し、甲長を測定した後に標識を装着して放流しています。標識を装着することで個体識別が可能となるため、標識装着個体が再捕獲されることでアオウミガメの生態に関する基礎的な知見(成長、産卵間隔、産卵海岸への回帰年数、回遊範囲など)を得ることができます。これまで九州地方や沖縄、四国地方などから再捕獲の情報が寄せられていますが、中国からの報告例もあります。標識には、プラスチック製や金属製で四肢に装着するタイプ(外部標識)や体内に埋め込むタイプ(内部標識)が用いられています。

人工ふ化放流事業

食用のため捕獲されたメスの親ガメを漁師から購入し、小笠原海洋センター(ELNA小笠原事業所)の施設内で産卵させて採卵を行っています。採卵した卵を人為管理下でふ化させ、稚ガメを放流しています。小笠原における「人工ふ化放流」は、1974年(昭和49年)に小笠原水産センターの事業として始まっており、その後、小笠原海洋センターに引き継がれ約30年間継続されています。近年、小笠原諸島におけるアオウミガメの産卵数が増加傾向にありますが、ウミガメにおける「人工ふ化放流」と「個体数増加」の因果関係は、明らかになっていないのが現状です。

短期育成放流事業(ヘッドスターティング)

放流した稚ガメの初期減耗を低下させることを目的に行われるのが短期育成放流(ヘッドスターティング)です。これは、ふ化した稚ガメをある程度のサイズまで育成して放流することで捕食される確率を少なくし、生残率を上げて個体数を増やすという考えに基づいていますが、その効果は実証されていません。また、限定された親ガメから生まれた子ガメだけを放流することがあるため、個体群の遺伝的偏りを招く可能性も危惧されてます。しかし、一定のサイズまで育成させることで標識の装着が可能となるため、子ガメの生態に関する基礎的な知見(成長、回遊範囲など)を得ることができる点では有効であると考えられます。こうした事項を踏まえて、小笠原海洋センターでは、一定頭数の短期育成放流を行っています。短期育成した子ガメは、普及啓発・教育事業にも活用されています。

大村海岸の夜間パトロールおよびアオウミガメ卵の移植事業

近年、父島の大村海岸(前浜)でのアオウミガメの産卵巣数が急激に増加しています。2000年まで年間10巣程度で推移してきた産卵巣数が2005年には、100巣を超えました。大村海岸は、島の中心街に隣接する海岸であり、街灯の明かりなどが差し込むため夜でも比較的明るい海岸となっています。稚ガメは光に誘引されるため、大村海岸でふ化した稚ガメは、海とは反対方向へ向かってしまい、路上で自動車に踏み潰されたりするケースが増えています。小笠原海洋センターでは、大村海岸に産卵された卵をセンター内のふ化場に移植し、人為管理下でふ化させています(雌雄が決定された後に移植をしております)。また、産卵シーズン中は、夜間パトロールを行い、観光客が産卵を妨害することないようにレクチャーを行っています。

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