小笠原のアオウミガメはなぜ減った?なぜ増えた?

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「ウミガメは絶滅危惧種」であり、特にタイマイ、オサガメ、ケンプヒメウミガメはレッドリストでは絶滅に近い種としてランク付けされています。個体数が減ったので保護活動をしているのですが、例えば、ダイバーの方は海にもぐるとウミガメに出会うことも多いようで、そんなにウミガメって少ないの?保護する必要があるの?と感じる方もいらっしゃるようです。

ELNAは小笠原でアオウミガメの保全活動をしています。今回は小笠原のアオウミガメはなぜ減った?どれぐらい減った?なぜ増えた?ということをお話します。

◆小笠原のアオウミガメは数が増えている

アオウミガメは絶滅危惧種なのですが、数が回復しています。アオウミガメの小笠原での産卵巣数のグラフです(1匹の母ガメが穴を掘って約100個の卵を産む=1産卵巣)。線の動きを見ると、右肩上がりです。

ここから少し算数になります。小笠原のアオウミガメは同じ母ガメがひと夏に4-5回産卵のため砂浜に上陸します(仮に5回とします)。近年は2,000巣前後の産卵巣があります。2,000巣の年は、2,000÷5=400となり、ひと夏に約400頭の母ガメが小笠原に産卵にやってきました。

そして、この母ガメ、毎年産卵にやってきません。3-4年ごとに産卵にやってきます。400頭×3-4年だとして小笠原に産卵にやってくる母ガメのトータル数は現在、おおよそ1,200-1,600頭となります(以上、おおまかな数です)。

母ガメが1,000頭もいれば十分な個体数のようにも感じるかもしれませんが、以前はもっとたくさんのウミガメが小笠原に来遊しにきていました。

◆小笠原の歴史からみる、ウミガメはなぜ減った?

①第二次世界大戦以前(~1944年)

小笠原では伝統漁法としてウミガメ漁が盛んでした。しかし、伝統漁法とは言え、昔はウミガメを捕り過ぎていました(乱獲)。これが原因でウミガメの数はどんどん減少していきます。

小笠原は1876年に日本領土となり、最盛期は年間3,000頭以上のアオウミガメを捕獲したと言われています。それだけウミガメがたくさん来遊していました。以後も1,000-2,000頭を捕獲していたが、1,000頭を下回るようになり、年数100頭に落ち込み、第二次大戦開戦頃(1940年頃)は100頭ほどの捕獲数になりました。捕れるだけ捕っていたので、ウミガメの数が減ってしましました。

1944年に第二次世界大戦の戦局の悪化により、軍属等として残された人を除き島民6,886人が内地へ強制疎開させられました。

②終戦後~日本返還(1944年~1968年)

終戦後、小笠原はアメリカの占領下になります。この頃、推定40-50頭ほどアオウミガメを捕獲していました。捕獲数がだいぶ減少しましたので、赤ちゃんガメがたくさん海にかえっていったと推測されます。

➂日本返還後(1968年以降)

1968年に小笠原はアメリカから日本に返還されました。以後年間100-150頭ほどの捕獲数で推移しています。そして、島民の帰島がようやくかなうことになりました。

1973年からは、ウミガメ漁は東京都漁業調整規則により、頭数制限されるようになります。

◆現在~なぜ増えたのか?

もう一度グラフを見てみます。1980年頃より産卵巣の数が増加しています。

小笠原のアオウミガメは30-40年で成熟する(卵が産めるようになる)と言われています。アオウミガメが増え始めた1990年の30-40年前は、小笠原は・・・②終戦後~日本返還(1944年~1968年)という時代で捕獲数が少なかった時代です。

つまり、捕獲数が減ったので、増えた、と推測ができます。ウミガメ減少要因(ウミガメの乱獲)を取り除くことで増えたのです。いたってシンプルなのですが、ウミガメを増やすためにはウミガメ減少要因をとりのぞくことが重要です。ウミガメの生態系に必要以上に人の手を加えなくても、自然のままでウミガメの個体数は増える、と言えます。

2020年はELNA小笠原海洋センター調べでアオウミガメの産卵巣約2,000巣でした。2,000巣から何万匹という赤ちゃんガメが今年も海に旅立ちました。しかし、2,000巣ということはその年に来遊してきた母ガメは400頭ぐらいです。小笠原では最盛期に、捕獲した頭数だけでも年間3,000頭いたので、昔は今よりももっとたくさんのウミガメが小笠原に来遊していたことがわかります。昔に比べればまだまだ小笠原のウミガメの数も少ないのです。

また、世界的にはアオウミガメの数は減少しています。小笠原は伝統文化としてアオウミガメ漁を継続しつつ増やしているので、世界的にも珍しい(そしてスゴイ!)と言われています。

もっともっとウミガメ達が増えるよう、引き続きELNAは活動をおこなっていきます!

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