humpback

ザトウクジラを調べる

小笠原のザトウクジラ

ザトウクジラは、繁殖場と餌場の2つの海域を季節的に回遊していることが知られていますが、小笠原諸島は、北太平洋に3グループある繁殖場の1つとなっています。沖縄の周辺海域もザトウクジラの繁殖場となっていますが、小笠原と沖縄間を移動する個体が高頻度で確認されていることから、同一グループの繁殖場と考えられています。小笠原には、無人島時代から各国の捕鯨船が父島・母島に寄航しており、1863年には、ジョン万次郎がアメリカ式捕鯨を小笠原近海で開始しています。1922年(大正11年)から1936年(昭和11年)の14年間で約500頭のザトウクジラが捕獲されたという記録も残っています。近代捕鯨が開始される以前(1900年代初め)に10,000頭~15,000頭(西部北太平洋だけでも2,500頭)生息していた北太平洋のザトウクジラが捕獲が禁止になる頃(1965年頃)には、1,000頭にまで減少したと推定されています。
「クジラは、食物連鎖の頂点にいる生き物である」と言われるように、海洋生態系における高次動物としての生態的地位と役割は重要なものとなっています。鯨類の餌となる低次生物相は、年による変動が大きく、鯨類の餌組成もそれに合わせて敏感に反応します。また、汚染物質が蓄積しやすいという高次動物の特性により、鯨類は、水銀やカドミウムといった重金属による影響を受けやすい動物となっています。鯨類を調査することは、その生態を解明するためだけではなく、気候変化などに伴う海洋生態系の変化や海洋汚染の実態を知る手がかりにもなります。

ザトウクジラの個体識別調査

ザトウクジラは、尾ビレ腹側の黒白模様や傷が1頭1頭異なるため、尾ビレの特徴を記録することにより個体を識別することが可能となります。小笠原海洋センターでは、クジラの尾ビレ腹側を写真撮影することで記録し、個体識別を行っています。個体識別写真(ID写真)を集積し、過去の個体識別写真と照合(マッチング)することで年齢や成長、社会構成、出産間隔、生息数などのザトウクジラの生態に関する基礎的な知見を得ることができます。