絶滅危惧種アオウミガメ保全活動報告2021(伊藤忠商事(株)様ご支援)

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エバーラスティング・ネイチャーでは、小笠原海洋センターで行うアオウミガメの保全事業に対して、伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区北青山2丁目5番1号)様より2017年より継続してご支援を受けております。新型コロナの影響がまだまだ継続しておりますが、徹底した感染防止対策を実施しながら、今年度は前年度よりも多くのボランティアを受け入れることができました。そうしたボランティアの皆さんのサポートがあり、今シーズンのフィールド調査もコロナに負けず無事に終了することができました。「大村海岸の光害対策(脱出子ガメの街灯への誘因防止策の検討)」に関しても昨年度に引き続きご支援いただいております。支援案件のベースとなっているアオウミガメ産卵巣数モニタリング調査とふ化後調査の結果とあわせて、概要をご報告いたします。

生物多様性の中でのアオウミガメの存在意義については、2017年の伊藤忠商事様支援事業をご覧ください。

産卵モニタリング調査およびふ化後調査の結果概要

調査概要

父島列島の約30海岸、母島列島の約10海岸、聟島列島の約10海岸を対象に定期的に海岸踏査し、各産卵状況をモニタリング調査しました。小笠原諸島父島におけるアオウミガメの2021年の初産卵は、2020年より約1か月ほど早い4月中旬に確認されました。今年は春先の海水温が低く、夏に高い海水温が継続する海況となり、アオウミガメの小笠原周辺への来遊が遅く、いなくなるのも早い傾向がありました。そうしたことが直接影響したかははっきり分かりませんが、産卵は9月上旬まで確認されたものの(昨年は8月中旬)、小笠原全体として産卵数は減少となりました。また9月と10月の台風接近と10月の大雨継続により、産卵海岸の砂が消失して産卵巣の流出し、ふ化後調査にも影響が及びました。

産卵期間中の約5か月間、合計約50海岸で産卵状況調査が実施され、その後、卵のふ化を待って、産卵調査時の位置情報をもとに再び海岸に赴き、ふ化状況を確認するために卵の掘り出し調査を実施しました。11月下旬には最後のふ化後調査が終了し、すべての調査が完了しました。延べ調査回数は202回(前年度172回)となり、それに費やした調査人員は延べ934人(前年度692人)となりました。

ウミガメ上陸跡から産卵場所を推測し、鉄筋棒を使用して卵を探し当てる
卵の白色化の状態を確認することで産卵日の推定も可能(卵は約2週間かけて全体が真っ白になる)

調査結果

2021年は、父島列島で約1,200巣(前年比69%)、母島列島で約330巣(前年比84%)、聟島列島で33巣(前年比118%)のアオウミガメ産卵巣が確認できました。小笠原全体で前年比で大きく減少し、昨年は父島列島で2016年から3年継続した減少がいったんストップしましたが、今年は再度減少に転じました。2015年以降で最も少ない産卵巣数であったため、非常に不安定な状況になっています。今後の推移を注視していく必要があります。

ふ化後のふ化率調査では父島で合計930巣に対して実施したところ、父島列島では約44,000頭の子ガメが海に帰っていったと推測されました(母島列島および聟島列島では、ふ化率データが不十分なため算出不可)。理論的な脱出率(卵数に占める脱出子ガメの割合)は父島列島で約29%となります。

ふ化後のふ化状況調査
砂が崩れやすかったり、卵の場所が深い時は、掘り出しも一苦労

大村海岸の光害対策

大村海岸の特異性

・父島の40か所以上あるウミガメ産卵海岸の中でも、人が生活・活動する繁華街にもっとも隣接する海岸(ウミガメが産卵する夜間も観光客や島民が自由に出入りしている=ウミガメと人の暮らし近い環境)

・アオウミガメは人気(ひとけ)のない暗い海岸を好んで産卵上陸すると言われているが(人工の明かりを好まない性格であるため)、大村海岸の近隣に人の出入りがほとんどない静かな海岸が存在するにも関わらず、大村海岸に産卵するアオウミガメが多い(父島全体の産卵巣の15-20%を占める

・大村海岸は、ウミガメ卵を食害するスナガニが少ないことや日陰(高温により死卵を防ぐ)を適度に作る植生があるため、多くの子ガメがふ化する(父島全体の子ガメ生産量の約30%を占める

・ウミガメの産卵を阻害することなくウミガメを間近で観察できる海岸であり、観光客や島民は決められたルールを守り、小笠原独自の自然や生命を身近に感じられる貴重な海岸となっている(ウミガメと人がうまく共生できる最適な環境を維持するための活動を実施=持続可能な社会の実現)

大村海岸・・・おがさわら丸の発着場所にも近い

ウミガメ産卵海岸としての問題点および卵を移動させるリスク

【産卵海岸としての問題点】および【卵を移動させるリスク】は、2020年の伊藤忠商事様支援事業をご覧ください。

対策の実施結果

昨年からスタートしたトリカルネットによる脱出子ガメ保護を今年も試行いたしました。昨年は30×30㎝のトリカルネットを使用しましたが、ネット外の砂から子ガメが脱出する事例もあったことから、今年は50×50㎝のトリカルネットに変更いたしました。その結果、トリカルネットから逃げてしまう子ガメはなくなりました。

具体的な手法は、以下の通りです。

① 産卵後50-55日くらいで産卵巣上にトリカルネットを設置する。ペグ(磁場に影響がないことを確認)で数か所固定する。※産卵ガメに壊されないように地面と同じ高さで平面的に設置する。
② 子ガメが隙間から逃げないように周りの砂をできるだけネットの上にかぶせる。
③ 【産卵巣番号】の表記したタグをトリカルネットにインシュロックで取り付ける。
④ 取り付けたトリカルネットに近くに黄色いペグに海洋センターのタグを目印として設置し、いたずら防止と見回り時に発見しやすくする。
⑤ 毎朝、大村海岸を見回り(公園管理組織に協力を要請する)、脱出した稚ガメを確認した場合は発泡箱に回収し、海洋センターに持ち帰る。
⑤ ふ化ガメの計数、およびふ化後調査を実施し、ふ化殻死卵は海洋センターに持ち帰り処理する。
⑥ 穴は埋め戻し、子ガメは人工灯のない砂浜から放流する。

子ガメ脱出前にトリカルネットが設置された産卵巣

今年は、設定した試験区で15巣の産卵巣に対してトリカルネット設置し(昨年:26巣)、987頭の子ガメを保護しました。子ガメの迷走通報は3件(昨年:9件)確認されました。

現状では、大村海岸全体の1割程度の対策実施(試行)となっているため、さらに試験区域を拡大し、効果を検証していく必要があります。トリカルネット設置後の毎朝の巡回が重要となりますが、その人員の確保や手法の修正などが課題となっております。観光客や島民への周知も含めて、効率よく実施できる体制を模索していきたい考えです。

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