ELNAでの2年間の実習生活:カメに染まった大学生は何を思うか??(木村莉子さん)

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皆さんこんにちは!エルナ実習生の木村莉子です。

聞き覚えある名前だな?と思ってくれた方、ありがとうございます。実は2年ほど前からエルナでお世話になっており、過去に数回こちらのブログも更新していました。
1回目:大学生のカメ漬け実習ライフ!2回目:初めての離島生活

この2年間、ありがたいことにたくさんの経験に恵まれ、新しい発見と色んな感情に揉まれながら大学生活を過ごしてきました。

カメ生活の集大成となる卒業研究も残るは執筆のみ(執筆が一番精神力削られるんですがね…)ということで、エルナでの経験を振り返りつつ、じゃあそれを踏まえて今後どんなふうに暮らしていくか?どんなキャリアを目指すか?などなど綴っていこうと思います。なかなか思いのこもった数年間を語るということで、長くなりますがお付き合いいただければ嬉しいです!(笑)

私にとって、大学生活といえばエルナ、エルナでの経験無しには私の人生語れない!そんな貴重な経験をすることができました。

振り返れば、エルナスタッフさんに連れられ初めてウミガメを見たときが人生の節目の一つだったのだなあと感じます。初めて見たカメはストランディング個体、何らかの原因で死亡し海岸に漂着した個体でした。

実は私は大学入学当初は文系分野の専攻(それもジェンダー・セクシュアリティー専攻、人生何があるか分からない!)を考えていて、解剖といえば中学でカエルを捌いたのみという解剖初心者だったわけですが、目の前で何十キロもあるウミガメの解剖を見ていても不思議とネガティブな感情は出てきませんでした。

その日の個体は身がパサついていて、ササミみたいだな〜と思いながらも解剖作業を手伝っていたところ、エルナスタッフの井ノ口さんがこんなものを見せてくれました。

「リコちゃ〜ん、プラでたよ」

初めてカメを見た日に、カメが誤食したプラスチックも見るという割とショッキングな日だったのですが、面白いのは誤食プラを見た時すぐに「ウミガメが可哀想」「海洋プラスチック汚染の緩和に貢献したい」という感情が芽生えたわけではなかったということです。

もちろんこの日以前にも事前知識として「野生生物がプラスチックを餌と間違えて食べる」や「海流によってプラごみが溜まるホットスポットが海上に存在する」などはニュースでよく目にしていていました。そういったニュースを見るたび、私の頭の中でイメージとして出来上がっていたのは、色とりどりなプラスチック製品を海洋生物がバクバク食べている光景でした。

対して井ノ口さんが見せてくれたのは、餌ともなんとも見分けがつきにくいようなプラスチックの破片や、グチャッとしている発泡スチロールのような破片。えぇこれプラなの?私がカメでもこれ食べちゃうかもなあ…という困惑が最初に感じた気持ちでした。

現場の方からしたらカラフルなゴミがそのまま出てくることの方が想像できないことなのかもしれませんが、私にとっては海洋ごみ問題への理解が一転した出来事でした。これがリアルなんだ、実際に環境で起きているプラごみ誤食って、教科書に載っている一文では語れないような現実味がある、となんだか怖くなりました。

エルナには横浜事務所以外に小笠原海洋センターという施設がありますが、この父島にある海洋センターでも魅力的な経験を積むことができました。

父島は日本最大のアオウミガメの繁殖地であり、春先にはザトウクジラの来遊があるなどダイナミックな自然が人気の理由だと思うのですが、私が心惹かれたのはボランティアが寝泊まりするコンテナの前をてくてく歩いているヤドカリたちでした。

東京暮らしをしている中でまずお目にかかれないような手のひらいっぱいの大きさのどっしりヤドカリたちですが、オカヤドカリと言い天然記念物として指定されているようです。

決まった時間になると同じ個体が現れて、可愛くて毎日写真を撮ったりと、体力的に厳しい小笠原生活を送る中でかなり励まされました。

ヤドカリ可愛い…うふふ…と足元ばかり見ていた生活をしていたら、新しい気づきにも出会うことができました。

それが足元の砂や枝珊瑚に混じった細かなプラスチック片の存在でした。

ピンク・青・赤・緑…と、まさに私がイメージしていたカラフルな海洋プラスチック汚染の光景だったわけですが、今回驚いたのは、父島が本州から1000km離れた孤島にも関わらずこういったマイクロプラスチックが結構な量散乱していることでした。

小笠原って東京から船で24時間かけてやっと辿り着けるような未開の地、まさかこのプラスチック破片たちは波に押されてこの距離を移動してきた?途方もない年月をかけてやってきたのか、それとも海流に乗ってたどり着いたのか…。

寝泊まりするコンテナの真横が海だったのですが、一見静かに見える海だけど実はとんでもない拡散力を持っていて、今このときもプラスチックが環境内を移動し続けているのかもしれない…と、自然の持つ力に驚きを感じるとともに、それじゃあ一回海に垂れ流してしまったプラスチックってどうなるんだ?と、未だ答えのない問いを見つけた瞬間でした。

また、エルナでの経験は思いもよらない新たな扉を開いてくれました。

その後交換留学でニュージーランドを訪れたのですが、何かインターンシップをしたいなと思っていたところ、国立研究機関NIWAの海洋生態学チームのメンバーが私の履歴書を見てオファーをくれました。

ウミガメの解剖やザトウクジラの調査に加わった経験があるなんて、面白い子だね!と現場経験を買ってもらい職を得ました。「ただ授業で学んだ」とは一味違う、自分で肌身に感じた保全経験を得ることができたのはキャリアを作っていく上でも大きなプラスとなりました。

この研究機関での業務で学ぶことはたくさんあったものの、また、海洋学者を目指したいと思うような人生の指針のきっかけを見つけられたものの、「生態学」という分野が本当に自分の興味に即しているか疑問を感じることがありました。

主に従事していた業務は、ニュージーランド沿岸に生息する無脊椎動物のデータベース作成という、どちらかというと基礎科学に近い内容でした。貝やワームの分別や種判定にあたりながら常に頭の片隅にあったのは、自分がこの業務をすることで救われる生き物がいるんだろうか、というもやもやした気持ちでした。

その違和感は次第に大きくなり、気づけばエルナの業務で目にしたウミガメやプラスチックのことを考える時間が長くなっていきました。自然環境における生物そのものの営みに関する研究ではなく、人と生き物が交差する点、そこで起きる軋轢や生き物の保全に携わりたいんじゃないか?自分は人間の生活と環境との調和に貢献したいんじゃないか?そんなぼんやりした方向性が出来始めました。

一度方向性が見えてきたらあとは行動するのみ、帰国後すぐに井ノ口さんに連絡を取り、自分の純粋な興味に従って「ウミガメによるプラスチック誤食」を卒業研究のテーマにしました。その中でもマイクロプラスチックを研究対象として選んだのは、初めてウミガメを見た日に感じた「リアルさ」を体現するのが大きな海洋ごみというより小さいサイズの破片だったからかもしれません。

波や紫外線の影響で小さいプラ破片がさらに小さく、ナノサイズになっていずれは血液の循環にすら侵入して…と、小さなプラスチックが「目に見えない」脅威である点も研究をしなければと思う大きな原動力の源でした。

そしてこの研究生活で得た学びがもう一つ、私はフィールド研究者でいるのが性に合っているということです。

今ではこんな研究ライフを送っていますが、実は高校生の頃まで勉強といえば嫌々するものでした。自分から進んで机に向かうというより、他の子が受験するから、テストが近いから、といった消極的な理由で勉強をしてきました。

自分でフィールドに出て、現場で見たこと・感じたことをベースとして、新しい仮説を立ててみるけどまたすぐにそれが覆される、じゃあなんでなんだろう?と考えてみて、ちょっと工夫してサンプル採取をしてみたりして、自分でもがきながら研究をつくっていく、そんなプロセスをものすごい面白いと思いました。

この時期を振り返って、親にも「あなたは自分に負荷をかけない子だなとつくづく思っていたけど、自分がやりたいことを見つけてからは見違えたように精力的に動くようになった」と言葉をもらいました。

調査がうまくいかなかった時、思うようにサンプル採取が進まない時など「今回は思うようにいかなかったけど、それって考えることがいっぱいあるってことだね!」と常に前向きに声掛けをしてくださった井ノ口さんには大変感謝しています。(アイスごちそうさまでした!!)

さて、冒頭でさらっと触れた通り私の研究はようやくひと段落つき、今は執筆活動に励んでいます。忍耐強くここまで読んでくださった方はどのくらいいるのでしょうか!? (笑)

私は3月に大学を卒業後、4月から引き続き海洋プラスチックの分野に研究者として携わります。

次の舞台はイギリスです。マイクロプラスチックに関する論文を世界で初めて発表した研究室(University of Plymouth, 国際海洋ごみ研究所 Prof. Thompson研究室)に運よく配属が決まり、博士号取得を目指し研鑽します。

エルナでの経験がなければ、間違いなくこの人生を歩むことはなかったです。大学院に進むことなく、普通に就職していたらどんな人生になっていたんだろう?と考えることもありますが、エルナでの実習生活を通じ肌身に感じた現場経験や、悩みながら研究を進めた経験が、「まだこの分野でやるべきことがある!」と私を後押ししてくれています。

非常に長くなりましたが、ここまでやってこられたのは人生の師とも言える井ノ口さん、研究の軸設定や根幹であるウミガメの解剖で実践的なアドバイスをくださった北山さん、2年間の関わりの中でたっっぷりお世話になったエルナのスタッフの皆さんのおかげです。小笠原を出てからは海洋センターのスタッフさんとはなかなかお会いできていませんが、スタッフさん経由で届く励ましのお言葉に、よし頑張ろう!と思えました。また、皆様からの表には出ない細かな励ましも、まっすぐに研究と向き合うガソリンとなりました。

研究や研究者と聞くと個人プレーでプロジェクトを進めるイメージがあると思います。今回のエルナでの卒業研究を通じて、そのイメージは全く正しくないなと感じました。見える支援、見えない支援、色んなサポートがあって著者が最終発表物としての論文を仕上げることができるんだなと気づきました。

エルナ育ちの海洋学者を目指して、今後も一生懸命もがき続けます!

地球の反対側で頑張っている子がいたなあと、たまに思い出して応援してもらえるととっても頑張れます!(笑) 今回のブログが最後になるか分かりませんが、また成長した姿をお見せできたら嬉しいなと思います。

またお会いしましょう!

木村莉子

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