現場にいれば、見えない部分が見えてくる①

現場にいれば、見えない部分が見えてくる①

インドネシア西パプア州のウェルモン地区で面白い現象が起きている。その前に説明をしておかなくてはならない。パプアの主要なオサガメ産卵地は、ジャムルスバメディ地区(以下JM地区)とウェルモン地区(以下Wer地区)の二つがある。この両地区は30kmほどしか離れていない。たったこれしか離れていないが、海岸長18kmのJM地区では産卵ピークが夏であり、海岸長5kmのWer地区では冬である。この理由は現状では全く分からないけど、世界的にみるとほとんどの繁殖地はWer地区と同じ冬である。夏の繁殖地は、JM地区をはじめとして、絶滅したマレーシア、繁殖地の泥濘化により急激な減少をしたスリナムとフレンチギアナの国境と、その数は少ない。

面白い現象というのは、冬場の産卵地であるWer地区の夏場の産卵が増えていることである。2005年はWer地区の夏場の産卵巣数の割合が、Wer地区の全産卵巣数の25.3%であった。2009年には28.6%となり、この割合はこの年まで、ほぼ横ばいで一定していた。ところが2010年にはいきなり49.6%と半数近くになり、2011年40.3%、2012年40.6%となった。僕らがWer地区の調査を始めたのは2005年だから、それ以前の状況は分からないけれど、1999年の産卵状況調査のデータから推測すると、この地区の夏場の産卵巣数は、全産卵巣数の15%以下であることもわかっている。向こうの言い方では、日本の冬に当たる季節は、東風が卓越する季節、もしくは高波の季節という。

アメリカの海洋漁業省は、2003年にオサガメの衛星追跡をJM地区で始めた。2005年にパプア大が参入して衛星追跡と標識放流をJM地区の産卵密度の高い海岸で開始した。2009年には、JM地区全体にわたって、多くの学生を動員して集中的かつ長期的な標識放流を実施する。2011年からWer地区で小規模な標識放流を実施し、今年から集中的かつ長期的な標識放流をWer地区でやろうとしている。アメリカやパプア大の参入と標識放流の規模が、Wer地区での夏場の産卵数増加のタイミングが一致する。また、標識放流の結果から、JM地区のオサガメが、夏場にWer地区で産卵していることが確認されている。