ウミガメを保護する

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僕らはジャワ海の5つの島でタイマイの保全活動をしている。セガマ島で事業を開始したのは1997年12月であった。あれからもう16年の月日が過ぎ去った。事業としては監視員を雇用して、毎日海岸を歩いてもらい、卵の場所から少し話した場所に棒を立ててもらい、番号札を装着する。ただこれだけのことをずっとやってきた。ふ化後に産卵巣を掘り返してふ化率調査をするわけだけど、これもインドネシアウミガメ研究センターの人たちが自主的にこなしている。しかし、長く現場を見ているとその活動に変化が生じていることが判る。卵を密漁して売っばらっていた監視員との取っ組み合い、卵を食いまくる体長2m近いトカゲとの格闘、卵を食いに来るサルとのにらめっこ、突然落下してくるヤシの実の恐怖、島に渡る漁船(チャーター)での漂流、傷口の化膿との戦い、日本から海岸清掃に来てくれた人たちの笑顔と汗、卵を市場に持って行くことで生活していた漁師から鉈で追っかけられたこと、その漁師がウミガメの保全事業に協力してくれたこと、そしてその人の死、様々なことが思い浮かぶ。

ふと振り返ると、一つの組織でタイマイの島を5つも抱えて事業を行っているところなんてどこにもない。まあ、何もしていないからできるというのはあるけど、何もしないからそれが保全につながるということが理解されていないのかもしれない。ほとんどのところは、一つの現場で一生懸命移植をしたり、アルゴスを付けたり、徹底的に標識を付けたり、潜水してカメを追いかけたり、水中で測定したり、卵の代謝量を図ったり、様々なことをやっている。つくづく僕らは研究者でなくてよかったと思う。僕らには、そんな偽善的な義務が生じないからだろう。僕が偽善的というのには深い意味がある。それら研究者の人たちはウミガメを保護するために調査や研究をやっていると、それが前提になっていると言うからである。言い方は悪いかもしれないが、1年や2年カメのことを研究したって、それが保全につながることなんかない。

アメリカがトロール網にウミガメ排除装置(TED)を付けて今では連邦州で法制化されており、なおかつ中南米諸国にもその使用を強制することができている。この網の開発に5年かけ、その後3-4年でその試験を行い、10年かけて法制化することができたのである。中南米諸国に押し付けるのに15年くらいかけている。もっと簡単な例だと、ウミガメが減っているのか増えているのか、その判定は20年や30年ではできないという事実である。それに気づくと、増減はそれほど重要ではなく、たとえ数が少なくとも安定化が重要であることに気付く。ウミガメを本当の意味で保全するには、だらだらと見守っていくしかないと思っている。

僕がこの文章で「保全」と「保護」を使い分けていることに気づいてくれた人はいますか。気づいた人も気づかなかった人も、下のアドレスをクリックして「応援する」を押してください。皆さんが1回押してくれるとELNAに10円入ります。ウミガメの保全のように毎日毎日、ノルマ的に押してくれると、それが大きな成果につながっていきます。

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