現場にいれば、見えない部分が見えてくる②

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オサガメは他のウミガメと違い、その産ワニに食われたオサガメ卵行動に予測つかない。僕らは、小笠原でも、ジャワ海でも、パプアでも、夜間に海岸を歩くときは一切懐中電灯を点けない。標識は、産卵雌ガメに最も影響が少ない産卵中もしくは産卵後に装着し、カメの産卵行動を妨げない。もちろん、そのための極秘テクニックもある。記録の際は、海を背にしてライトをノートに近づけ屈んで記録を取るようにしている。絶対にしてはならないのは、懐中電灯で海を照らすことである。このようにカメに対して、常に影響を最小限にすることを考えた標識放流では、上陸したカメの95%に標識を装着するのは絶対に不可能である。パプア大の学生に移植の悪影響や海岸を、懐中電灯を点灯させて、あちこち照らしながら歩くことの悪影響など、さんざん言ってきたが、学生に話をしても、彼らは毎年入れ替わるし、夜の海岸をライトなしで歩く訓練もされていない。と、言うより懐中電灯やヘッドライトを持つとインドネシアの人は子供の用に点灯させたくてたまらなくなってしまうようだ。エルナのカウンターパートの職員でも、無意識につけてしまうことがある。そのため、彼をオサガメから担当から外した。測定や標識装着に関しても同様である。ライトを点けないで歩いても、小笠原のアオウミガメやパプアのオサガメなど、波打ち際でかち合うと、彼らは反応し、海に戻ってしまう。その点、タイマイは人を気にしない。小笠原のアオウミガメは7月に入ると、わりに人の存在を気にしなくなるが、パプアのオサガメは、簡単に産卵場所をかえてしまう。オサガメのこのような行動は、論文にも発表されているが、標識装着率を上げるためには、誰も気にしていないようだ。標識装着率が高いことを自慢するのは本末転倒であり、オサガメのような絶滅寸前の種に対して、絶対に行ってはならない調査である。しかし、現場ではこのように重要なことに対する気遣いは、ほとんど見られないのである。当然のことであるが、メキシコやコスタリカのように標識装着率の高い繁殖地のウミガメたちは、絶滅の崖っぷちにいる。(写真は、ワニに捕食されたオサガメ;マノクワリの海岸にて)

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