NPOとしての責任(No.40)

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昨年から、僕の中で足踏みをしていることがあった。東日本大震災に関して、である。NPOとして、ウミガメ屋として、僕らは何をすればよいかということである。日本がこのような状況になって、組織としてできることは何か。僕らは、やはり僕らが今やっていることを淡々と貫き通すことしかできないのではないか。これまでやってきたことをやり抜くしかないと、そう思ってやってきた。ところが、昨年の夏に福島第一原発の3号機でMOX燃料を使用していることを知った。また、海に放射性物質が垂れ流し状態になっていることも知った。内陸部の群馬県のアユからセシウムが検出されていることも知った。北関東から福島にかけてのコウナゴからも検出された。 ウミガメは、食物連鎖の中でピラミッドの上部にいるが、魚類のように徐々にその連鎖が繋がるのではなく、直接食物連鎖ピラミッドの下部にいる生物を捕食する。アオウミガメでは、ホンダワラのような流れ藻やテングサのように固着している海藻やそれに付着している生物、その他にはエボシガイやヒカリボヤなども摂餌している。アカウミガメでは、ヤドカリや貝類の底棲生物を摂餌している。食物連鎖ピラミッドの中では、ピラミッドの下部に位置する生物が、最も放射性物質を吸収しやすい。捕食者である高次の生物は、汚染された低次の生物を摂餌することにより、その放射性物質を体内に少しずつ濃縮していく。ウミガメの場合、下部の生物を直接摂餌することから、大量の放射性物質を体内に取り込む確立が非常に高くなり、直接的に影響が出やすい。このことが、原発事故と結びついてしまったのである。

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北関東から東北にかけての漁業は、原発事故によりまともな操業もできずに危機に瀕している。そのほとんどは、風評被害と言うけれど、海洋生物に関して放射能汚染の状況調査が追いついていない。 一部の検出された魚類のニュースに振り回されて、北関東から福島の「さかな」は全て危険だと決めつけられている。日本の漁業を守るには、海洋に関する放射能汚染の実態を調査するしかないのである。 風評被害で魚が売れないのではなく、汚染の実態が判らないから売れないのである。

僕らはカメ屋である。カメ屋でしかできない調査もある。ウミガメを通して関東から東北にかけて、海洋の汚染状況の調査を始めることにした。 これは、僕個人の意識ではなくELNAの意識として発露した調査である。みんながこのような意識を持ってくれるかぎり、ELNAはよい方向に進んでいくだろう。 また、このような意識の発露がNPO(組織)としての責任に繋がるのだと思う。僕は僕なりにELNAを引っ張ってきたけど、すでにELNAは意識をもったブレない組織に育っている。 僕がずっと仕事に対して持っている気持ちは、「ブレないこと」である。それが今組織の中で芽生えている。仕事が「ブレる」と、ただ単に中身のない金もうけだけの請負になる。 そんな仕事をしても、僕らには意味がない。こんな僕らの調査能力を認めてくれて、今回のウミガメを指標とした放射能汚染の実態調査を助成してくれる組織がある。 ありがたいことだ。これからの僕の役割は引っ張るのではなく、後押しする方に回まわることになるだろう。ELNAはもう十分に成長しているのだから。(「NPOとしての責任」了)

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