珍亀②~クロウミガメの雑種??!

Pocket

先日、アクアワールド大洗さんからご連絡をいただき、茨城で死亡漂着したウミガメの調査をしました。
なんだか、変なウミガメでした。
それが、こちら!

何が“変”なのかと言いますと、普段見ているアオウミガメとなんだか違うんです。皮膚の色合いや質感が。
例えば、いつも白いところが灰色っぽく、質感がなめらかでシルクのような肌触りですべすべしているのです。
「クロウミガメ?いや、でも甲羅の形が違うし…おなかの甲羅も白い…でもちょっと黒いところもある・・・?う~~~ん。。。」
呟きながら調査をしました。

いつものアオ(横顔)

珍亀(横顔)

いつものアオ(腹側):真っ白い!

珍亀(腹側):手足の付け根が灰色

ところで、みなさんは「クロウミガメ」というウミガメをご存知でしょうか?
こちらがその、クロウミガメです。

クロウミガメ(横から)

クロウミガメ(腹側)

「なんだか、アオウミガメに似ていない~?」と、そんな声が聞こえてきそうです。そう、それもそのはず、クロウミガメ(学名Chelonia mydas agassizii)はアオウミガメとの間に遺伝的に明確な違いが出なかったため、正式な“種(しゅ)”として認められず、アオウミガメの亜種という位置づけです。似ているのは当たり前ですよね。

通常のアオウミガメとの違いはこちら

クロウミガメは基本的に東太平洋に生息していますが、日本各地でも稀に確認されています。ELNAが実施する関東での漂着ウミガメ調査では2頭ほど確認されています。1,500頭くらい調査しているうちの2頭なので、珍しいのは分かりますよね(関東ではオサガメより珍しい)。
クロウミガメが生まれるのは中南米などの東太平洋なので、太平洋を横断して日本まで来たのでしょうか??
アカウミガメやオサガメといった他の種類のウミガメでは太平洋横断の回遊がみられていますが、アオウミガメは一般的にはもっと狭い場所を利用しています。
たとえば小笠原で生まれたアオウミガメは本州沿岸を餌場とするため、1000~2000㎞ほど移動しただけですし、ハワイのアオウミガメもハワイ諸島周辺を利用しています。クロウミガメも通常は東部太平洋に産卵地があり、餌場としては東部太平洋を中心に生活しています。
日本で見られるクロウミガメの数はとても少なく、とてもマイナーです。以上のことから考えると、死滅回遊のように、海流に乗って本来の生息地でない日本までたまたま来ちゃったウミガメなのでしょうか!??

話しは戻りまして、冒頭で“変”といった珍亀は何だったのでしょうか?
クロウミガメに詳しい元日本ウミガメ協議会の岡本氏に確認していただいたところ、これは実はクロウミガメと一般的なアオウミガメとの雑種ということが分かりました!


「ウミガメは生まれた海岸に戻る」というのを聞いたことありますでしょうか。
ウミガメは決まった場所に帰るからこそ、その地域特有の遺伝子型があるわけです。また、決まった場所に帰って繁殖するからこそ、アオウミガメとは異なる特徴を持つ“クロウミガメ”が存在するわけです。
しかし雑種がいるということは、簡単に言うとこの珍亀の父か母が本来帰るべきアオウミガメorクロウミガメの繁殖地に帰らずに交尾して子孫が生まれてしまったということです。
もちろんほかの可能性も考えられますが(例えば水族館で人工的に繁殖したものが自然界に戻されてしまったとか、自然界で餌場が被ることはあるのでそこで事故的に交尾しちゃったとか ←これらはあくまで筆者の現時点の推測の一つであるため信憑性はありません)、遥か昔にウミガメの産卵地が世界各地に広がっていったことを考えれば本来の回遊域を越えて遠征をするカメがたま~にいて、さらにその中から遠い地で繁殖に成功する個体が出てくるのは有り得ることなのかもしれません。
いずれにしてもこの珍亀の真相が、ウミガメの未だ解明されていない生態の一部を解き明かす鍵となるかもしれません。

====
”珍亀”シリーズ①
【珍】子ガメ生きていました
珍亀、その後。。。

関連記事

  1. 珍亀、その後。。。
  2. 新スタッフ~はじめての調査の感想
  3. ウミガメの漂着場所が一目瞭然!カメマップ公開しています
  4. 【読売新聞】ELNA小笠原事業所が取材を受けました
  5. アオウミガメ産卵巣脱出の映像配信を開始
  6. ウミガメ漂着個体の調査in横須賀
  7. 【珍】子ガメ生きてました
  8. 2014年7-10月のストランディング調査
PAGE TOP