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怒り(No.9)

2004年2月末、僕はコスタリカにいました。国際ウミガメシンポジウム、僕はそれに参加していたのです。その時ほど、自分がカメ屋だということを意識したことはなかった。コスタリカで、古き良き時代のカメ屋たちの世界が、崩壊していく音を聞いたのです。それは、荒々しく突然、降って湧いたように現れ、荒廃だけが残されていくようでした。

SWoT、この聞き慣れない言葉は、State of the World’s Sea Turtlesの略です。訳せば、「世界のウミガメの状態」となります。要するに世界のウミガメのデータを皆で共有し、皆でウミガメの保護を行っていこうという国際ウミガメ学会が主体となったプロジェクトです。国際ウミガメ学会は、昨年設立された学会で、これまで毎年、主にアメリカで開催されていた国際ウミガメシンポジウムの主体となる組織です。コスタリカの国際ウミガメシンポジウムは、学会が設立されて2回目のシンポジウムですが、通算24回目になります。

僕がSWoTのプロジェクトを知ったのは、コスタリカのシンポジウムが始まる10日前でした。シンポジウムのプレジデントからのメールで、こんなプロジェクトを学会でやって行くから、僕が持っているデータをコスタリカまで持ってきてくれと言うものでした。ただ、今回はオサガメが重要だから、オサガメのデータだけは絶対に持ってきてほしいと書いてあったのです。プログラムにもSWoTのことが書いてありました。プログラムには、「この重要なプロジェクトへの参加にあなたをご招待します。戴いたデータはこの学会と協賛しているデューク大学の方で解析し、プロジェクトに貢献した人々全てに結果をシェアします。」と書いてありました。当然のことながら、この重要なプロジェクトについて、今回のシンポジウムの期間中に開催される理事会で、話し合いが行われるものだと思っていたのです。僕も10名の理事の一員なのです。シンポジウムの開催中に、理事会が4回開催されました。しかし、これについて話し合われることはありませんでした。初日にプログラムをみたときから、多分僕の中で怒りの噴火の前兆が始まっていたのだと思います。

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シンポジウムの4日目、デューク大学の研究者が、SWoTの説明をしました。組織関連図を示しながら、データの解析はデューク大学でSWoTの核心部、国際ウミガメ学会やアメリカの各大学、ウミガメの一部の著名な保護団体は、SWoTを取り巻く、研究グループや管理グループなどの一つの要素である。研究グループの要素の一つとしてフロリダ大学も入っていた。この時の僕は、全身怒りに震えたのである。何故なら、プレジデントからのメールにしろ、プログラムに掲載されていた説明にしろ、このプロジェクトは国際ウミガメ学会が中心と明記してあります。しかし、その説明では、単なる情報収集するグループの一要素でしかない。

これは明らかに陰謀です。学会のプレジデント、デューク大学、あるオサガメの研究グループたちが自分たちだけで決めたものなのです。フロリダ大学のウミガメ研究者に聞いても、そんな話は今まで一度もしたことはないといっていました。だけど、メンバーに入っているのではと聞いたが、彼らが勝手にやっているだけ、とのつれない返事があっただけです。この会議のプレジデントは、国際自然保護連合(IUCN)のウミガメ専門委員の共同議長も今年からやっている。まともなカメ屋は、誰も彼のことをカメ屋だと思っていませんし、誰も彼がウミガメのことを知っていると考えてもいません。ある有名なアメリカの自然保護団体の副会長である。彼らは、政治的(金銭的)にカメ屋の世界の乗っ取りを始めたのである。

僕のささやかな抵抗は、彼らが盛んに言う「太平洋のウミガメは急激な減少をしている。」という言葉に対して、「西部太平洋のウミガメは、一部を除き、減少傾向にはない。減少しているのは(あんた等が関わっている←これは頭の中だけ)東部太平洋だ。」「Pacific・・・・」と、彼ら。「Eastern Pcific・・・」と、僕。こんなささやかな抵抗から始めたのだが、気がつくと、「やっぱ、俺がやるの?」という、いつものパターンになっているのです。アジアの仲間、現場のカメ屋、アメリカのまともな研究者たち、一緒に立ち上がりましょう。未だに怒りの炎は、僕の中で激しく燃えています。「データをよこせだと。俺たちがちゃんと解析してやるだと。冗談じゃないぜ。」(「怒り」了)