今、やらなきゃいけないこと

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今回からシリーズで、僕の目から見たウミガメを取り巻く世界、ウミガメ界の現状をつづってみたいと思う。現在、僕も含めてエルナの8名の職員は、横浜事務局、小笠原事業所、館山出張所に分散している。そして、関東周辺のストランディング個体の調査、小笠原でのアオウミガメの保全事業、ザトウクジラ調査、サンゴ調査、インドネシアジャワ海での6か所のタイマイ保全と調査、西パプア州での3か所のオサガメ保全と調査を行っている。しかし、タイマイでは1か所、オサガメでは1か所、活動を中断している。それでもこの8名でこれらの事業をこなすのは、現体制では完全にオーバーワークであり、財政面でも常に不安定な状態が続いている。2013年6月25日に、エルナは認定NPO法人となったが、それによって上記の大枠の問題が解決されるわけではない。

一つ一つの事業を遂行していると、どうしてもジレンマに陥る。慢性的な人材不足と資金不足、やらなければならないことのやれない歯がゆさが常にまとわりついてくる。西パプア州のマノクワリ地区のオサガメ保全事業のように事業を切り捨てるのは簡単であるが、オサガメの現状をみつづけているなかで、僕自身は決してそれを妥協できないでいる。こんな現状で、本当に僕らはオサガメを種として捉え絶滅から救うことができるのか、オサガメを絶滅から救えるのは僕らしかいないという自負は、僕の中では自明のこととして存在している。財政的に、事業を拡大したり縮小したりしなければならないのは分かっているが、それをやると、僕らが本来目指しているものとは違った路線で、ウミガメを観なければならない。確かに、現資金状況を無視して事業を遂行すれば、エルナはなくなり、そこには何も残らなくなるだろう。僕もウミガメとの接点はなくなってしまうのだろう。僕個人なら、それはそれでも構わないけど、今の世界のウミガメの現状をつぶさに見続け、エルナと関わって働いている人たちの夢や希望を知ると、僕がこれまで培ってきた経験を無にすることはできない。僕は、彼らはもとより、エルナを取り巻く人々、ウミガメに関わる人々に対して、責任を果たす義務がある。僕は、こうしてウミガメに関わってきた以上、僕自身がみてきたものを伝える義務があるし、ウミガメを絶滅させるわけにはいかない。

そういう認識で、このコラムを続ける責任があると痛感し、ここに筆を走らせるのである。思いは一つだけである。広く深くウミガメの現状やエルナのことを多くの人たちに知ってもらいたい。それだけである。これをみんなに読んでもらって訴えかけることが、僕が今一番しなければならないことなのだ。今回から、ちょっと短めで、単発でガシガシ書いていくので、どんどんみんなシェアして、多くの人に読んでもらいたいと思う。

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